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「なんだかやる気が出ない」
「気分がふさいで外出したくない」
「家事も仕事もだるい」
生きていればありますよね。
何があったというわけではないけれど落ち込んでしまうこと。
日光浴やウォーキング、気の置けない友達とおしゃべりもいいですが、
時には気分転換に元気が出る本を読んでリフレッシュ!
お家で元気を補給しましょう。
女性向けに元気の出る小説をご紹介します。
読書のストレス発散効果は散歩以上!
ユーモアセンス抜群! 西加奈子の作品『きりこについて』
西加奈子は第152回直木賞受賞作家。
代表作は『サラバ!』『通天閣』『劇場』。
テヘラン・大阪育ちという異色の経歴。
軽妙な語り口、大阪で鍛えられたユーモアセンス、骨太なストーリー。
西加奈子の作品は読み手の価値観をゆさぶってくれます。
今回のおすすめは『きりこについて』。
冒頭の一文は「きりこは、ぶすである。」
こんな出だしの小説、珍しいです。
百人が見て九十九人から百人がぶす認定するきりこ。
美男美女家系の欠点を集結させた奇跡の子です。
彼女の人生は
- 幸せな10年間
- 初恋の子から「ぶす」と言われてどん底の2年間
- 引きこもり、予知夢を見るようになった転換期
- 自分を見つめなおす再生期
から成り立ちます。
なんという波乱万丈な人生!(若いのに…)
『きりこについて』がリアルなのは、きりこが自分をぶすだと認識するまでに時間がかかるところ。
幼少期は自分を含めて「美醜の価値基準」について無知・無自覚ですよね。
大人がほめる子供とそうでない子供の区別がつかずに「??」となる―。
ファンタジー的な要素が強いのに身につまされるのはこうした細部がしっかりと描かれているから。
子供時代を思い出します
きりこの相棒は賢い黒猫 ラムセス2世。オス。
子供時代にきりこが拾ってきてからずっとそばにいる無二の親友です。
このキャラクターがすばらしい。
きりことラムセスの生き方は美意識や社会通念を根本からひっくり返します。
彼らをとりまく人々もユニーク。
子供の頃の万能感、世間体や固定観念が無縁だった頃を思い出させてくれます。
そういった意味でどこかなつかしい作品です。
『漁港の肉子ちゃん』『円卓』もパワフル。
おすすめです。
美意識や性の問題を扱っても、からっと明るい作品。
文庫版はこちら▼
電子書籍版はこちら▼
『きりこについて』は、2022年3月電子書籍化!
うれしいです。
『円卓』は主人公のキャラクターが強烈でキュート。
『漁港の肉子ちゃん』はアニメ化されましたね。
桐野夏生 『魂萌え!』は専業主婦への応援歌
『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、『柔らかな頬』で直木賞、『OUT』で米国エドガー賞にノミネートされた桐野夏生。
この他にも数々の受賞歴のある作家です。
映像化作品が多数。
映像化された作品からハードボイルド、ダークなイメージが強い桐野夏生。
実際に重厚な小説に傑作が多いですが、今回のおすすめはこちら。
『魂萌え!』
2006年に高畑淳子主演でドラマ化、2007年に風吹ジュン主演で映画化されました。
これはぜひ原作を読んでほしいです。
専業主婦の関口敏子。
息子と娘2人の子供が成長してほっと一息つく日々。
夫が定年退職後、突然の心臓発作で帰らぬ人となります。
ある日、携帯電話の着信履歴から亡夫に愛人がいたことに気が付いて…。
義理の娘との関係、異性とのつかの間の逢瀬と失望、新しい交友関係、夫の愛人との戦い。
様々な問題に悩みながら、ポジティブに進んでいく様子がとてもリアル。
気弱なヒロインが一歩一歩人生を切り開いてゆく様子は読者に勇気を与えてくれます。
桐野夏生作品としては異色作。
明るくあたたかい読後感です。
ヒロイン 関口敏子は桐野作品の中でもっとも「普通の人」。
だからこそ共感できます。
吉田修一 『7月24日通り』主題は「失敗してもいい」
『パレード』で山本周五郎賞、「パークライフ」で芥川龍之介賞を受賞した実力派。
長崎出身の吉田修一。
『悪人』『怒り』『横道世之介』『さよなら渓谷』『犯罪小説集』など映像化・舞台化作品多数。
吉田修一は社会派で重たいテーマを扱った作品が多いですが、おすすめはこちら
『7月24日通り』。
『7月24日通りのクリスマス』として中谷美紀主演で映画化されました。
が、原作はもっと現実的。
映画を観た人にも原作は別作品として読んでほしいです。
平凡なOL小百合。
自慢はイケメンの弟だけという地味な女性です。
小百合は地味な女の子。中谷美紀はミスキャスト。
自分の住む港町をリスボンと重ねるなど、やや妄想癖があります。
高校時代、誰もが憧れていた先輩との再会。
また頭をもたげる恋慕。
自分のような平凡な人間は身の丈に合った恋愛をすべき?
吉田修一作品としてはライトな主題ですが、
「間違ってもいい!」という強烈なメッセージを感じる作品。
現代社会、誰もが「失敗したくない」「間違えたくない」「ダメだったら恥ずかしい」と考えがち。
みんな小利口になりましたよね。
けれど、本当に心のままに動いたら?
人生は一度きり。
本当に後悔しない選択は?
自分で責任が取れるのならば自分の気持ちに正直に。
「他人目線」を吹き飛ばしてくれます。
普段は女性の登場人物にきびしい(笑)、吉田修一の小説としては希少ですね。
転ぶと分かっていても進んでみたい道はあります。
転んでも、立ち上がる決意があるのなら大丈夫。
サマセット・モーム 『お菓子と麦酒』 「百年もすれば皆死んでしまうのよ。」
ウィリアム・サマセット・モームはイギリスの作家。
代表作は『月と六ペンス』『人間の絆』、
短編集『雨・赤毛』など。
稀代のストーリーテイラーとして名高いです。
モームは小説の「おもしろさ」にこだわって作品を書き続けた作家。
マーガレット・ミラーなど彼の影響を受けた作家はたくさんいます。
「文学」と重く考えず、手に取っていただきたいですね。
岩波文庫の『世界の十大小説』なんて大笑いできますから。
今回のおすすめは『お菓子と麦酒』
重鎮作家ドリッフィールドの伝記を書くことになった主人公。
彼はドリッフィールドと同郷。
ドリッフフィールドとその先妻ロウジーと面識がありました。
伝記のために作業する彼の頭に、過去がよみがえります―。
この本の魅力はなんといってもドリッフィールドの先妻 ロウジー。
豊満な肉体、明るくキュートな彼女は気立てが良くて誰とでも仲良くできます。
ただ一つ、彼女には困ったところがあります。
それは奔放な男性遍歴。
しかも、ロウジーはケロッとしていて深く考えません。
夫がいても、高価なプレゼントをくれる人、自分を称賛してくれる人とは関係を結びます。
彼女を愛しつつも、不貞行為に懊悩(おうのう)する男性たち。
主人公の青年もロウジーに恋をし、関係を結ぶのですが彼女には複数の愛人がいることを知ってしまいます。
悩み、嫉妬し、ロウジーをせめる主人公。
そもそも、主人公とロウジーは不倫…
そんな彼にロウジーが言い放った言葉が秀逸。
「百年もすれば皆死んでしまうのよ。そうなれば何も問題じゃあなくなるわ。」
これはパワーワード。
大抵のことならこの一言で片付きそうです。
*セリフの引用は岩波文庫『お菓子とビール』行方昭夫訳。
天真爛漫、わが道を行くロウジーが魅力的な一冊。
サッカレー『虚栄の市』は結構「わた鬼」。 ベッキーに驚愕せよ!
ウィリアム・メイクピース・サッカレーはイギリス作家。
カルカッタ出身。
スタンリー・キューブリック監督が映画化した『バリー・リンドン』の原作者。
おすすめは『虚栄の市』岩波文庫で全6巻。
現代日本では北村薫の「ベッキーさんシリーズ」で知名度が上がったかもしれません。
ヒロインが女運転手 別宮(べつく)さんに「ベッキーさん」というニックネームを付けたのはこの小説から来ています。
岩波文庫、全6巻。
出版社名と量でしり込みしないでほしいです。
『虚栄の市』は読み始めると止まりません。
サッカレー自身の挿絵付き。
特に橋田寿賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』などがお好きな人にはおすすめです。
19世紀初頭のロンドン。
女学校を終えたベッキーとアミーリアが世間へと一歩を踏み出します。
しとやかな外見、やさしくおとなしいアミーリア。
上昇志向が強く、勝気で活発な美貌を持つベッキー。
波乱万丈な人生をダブルヒロインはどう乗り越えるのか―。
ベッキーさん、最強。
女学校で教師に嫌われてもどこ吹く風。
生きる、のし上がるためなら何でもする姿勢がたくましいヒロイン。
ここまでやるか?の連続で、驚愕するアミーリアに読者も同情と共感が禁じ得ない―。
ちょっとやりすぎだと思っても
どこかからっとしていて魅力的な女性です。
ベッキーに比べると韓国映画『猟奇的な彼女』とかかわいいな、と感じますよ。
『虚栄の市』を読んでいると国と時代が違えども、人間はそんなに変わっていないなと思いますね。
古本屋さんで見つけたらぜひ、手に取ってみてください。
以上、偏っていますが、元気が出る本のおすすめです。
絶版になっているものがありますが、参考にしてください。
絶版になっている本を復刊させるには「復刊ドットコム」で投票!
気になった方はぜひ、のぞいて見てください。
復刊ドットコム管理人は年中、お世話になっているサイトです。
高野和明『幽霊人命救助隊』死者から見た生はかくも魅力的
『13階段』、『ジェノサイド』が有名な高野和明。
どの作品もそれぞれ読みごたえがありますが、管理人のイチオシはこちら。
『幽霊人命救助隊』です。
自殺したため、天国に行くことができないさまよえる魂たちに神様から指令が出ます。
「天国に行きたかったら49日以内に自殺志願者100人の命を救え!」
浪人生、やくざ、中年男性、妙齢の美女。
慣れない人命救助に四苦八苦するうちに、お互いの過去を知ることになりますが―。
設定がファンタジーで好き嫌いが分かれそうですが、読み進んでいくと様々な社会問題が出てきて考えさせられます。
重たくなりがちなテーマを娯楽として楽しめる形にまで落とし込んでいるところが職人技。
今がどんなにつらくても死者から見た「生」は希望に満ちていて美しい―。
同様の主題を持つ作品に井上ひさし『ムサシ』、ニール・ゲイマン『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』などがあります。
読みやすさでいえば『幽霊人命救助隊』が一番です。
▼ヘンリー・セリック監督の名作『コララインとボタンの魔女』の原作者ニール・ゲイマン。
傑作ダークファンタジーです。
番外編 森下裕実 『大阪ハムレット』で泣き笑い
おまけです。
小説ではありませんが、元気の出る漫画をご紹介します。
森下裕実『大阪ハムレット』全5巻。
『少年アシベ』『ここだけのふたり!!』など四コマ漫画で有名な方ですね。
『大阪ハムレット』は松坂慶子、岸部一徳で映画化されました。
もともと連作短編集ですので、この中のいくつかの話を映像化したというかたちです。
大阪の下町を舞台に、様々な悩みを持つ人々がたくましく生きていく様がリアルに描かれています。
LGBT、年の差カップル、不妊治療、親子の葛藤、男女間のすれ違い―。
現代的かつ重たいテーマを、時に笑い、時に涙を交えて描き出す作者の筆がさえわたった珠玉の作品群。
弱くても、へこたれても立ち上がる人たちをあたたかく描いています。
どの年代の人にもおすすめです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
参考にしていただけるとうれしいです。
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