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2023年7月12日(水)からフジテレビで放送されているドラマ『ばらかもん』。
舞台は九州。長崎の五島列島。
訳あって都会から移住した書道家と、島民たちとの生活を描いた地元ネタ満載のコメディです。
『ばらかもん』は五島の方言で「元気者」。
読めば元気がわいてくる、明るい漫画です。
この記事では、実際に長崎で20年以上暮らしたことがある管理人が『ばらかもん』の感想を語りたいと思います。
ヨシノサツキ『ばらかもん』島民たちの人柄がいい!
『ばらかもん』の最大の魅力は島民たちの人柄でしょう。
管理人は18歳から飛び飛びで40歳過ぎまで長崎市で暮らした経験があります。
長崎県はお人よしが多い九州にあっても、飛びぬけて穏やかでやさしい県民性。
全体的に「おっとり」していますね。
東京から来た方に「長崎にいる福岡人は見ただけで分かる」と言われたことがあります。
理由は簡単で「歩くスピード」の違い。
長崎にいて、用事もないのにガンガン人を追い越しているのは間違いなく福岡人だとか。
これは実際にそうでしたね。
福岡<大阪<東京の順に速度が上がります。
ふだんはゆっくり・おっとりですが、芯がしっかりしているのが長崎人。
言葉はやわらかいですが、嫌なことは「イヤ!」と言える強さがあります。
1巻に郷長の息子ヒロシが半田に「差し入れをやめる」と申し入れる場面。
これは長崎だから成立する場面で、福岡だったら男はするっと逃げて女に言わせるところです。(断言)
『ばらかもん』の作中で島民は家に鍵をかけないというエピソードが披露されていました。
さもありなん。
一度、家人が自動車の鍵を付けっぱなしで帰宅し、駐車場に一晩放置したことがありました。
自動車は盗まれませんでしたね。
これが福岡市博多区なら2秒で盗られていたと思います。
その点、長崎は治安はいい土地ですね。
自転車も基本的に盗まれません。(これは坂が多いから)
『ばらかもん』いきいきとした五島列島の生活
主人公半田の知り合いが来て、魚釣りをする回があります。
少女たちが釣りに慣れていて、都会人の釣り針に餌を付け、魚が釣れたときには針から外してあげる、いい場面ですよね。
実際に長崎は釣り人口が多く、釣りができる海岸に行くと知り合いが3人いた、とかよくありましたね。
そして、若い女性もきっちりと魚をさばける(人が多い)。
長崎在住の作家 佐藤正午のエッセイで「親戚の家にヤズ一尾持って遊びに行く女の子」のエピソードがありますが、たくましいですよね。
私の知人は夜中にドアチャイムが鳴ったので出てみたら、友達がタチウオ3尾持ってきていたと言っていました。
長崎だと「またか」ですが、都会に出るとタチウオは高級魚。
思い出してうらやましくなりました。
長崎で食べるタチウオの刺身は絶品。
旅行する機会がある方はぜひ、試してみてください。
また、都会から来た半田が魚の味を聞かれて即答しないところ、リアルですよね。
長崎の青魚(アジ、イワシなど)は新鮮でとてもおいしいですが、移住してすぐには食べないんですよね。
なぜなら、ちゃんぽんとかしっぽく料理とか、別の物を食べる機会が多いから。
私も「長崎は魚がおいしい」と心から言えるようになったのは、住んで10年くらい経ってからでした。
寿司屋でまぐろが少ない、とか鉄火巻が白身魚とか驚くことばっかりで、魚の味を気にしていられなかったというのもあります。
『ばらかもん』の中でなるが貝殻(中身入り)を売るシーンがありますよね。
あれで思い出したのが、長崎の鮮魚店でサワガニを売っていたこと。
しかも「ペット用」の文字が!
えっ、カニをペットに??しかも魚屋で???とかなりびっくりしました。
お店の看板には「刺身、自信あります!」と書いてありましたが、えっ、でもペット用のカニ売ってるし…と疑ってしまいましたね。
『ばらかもん』方言の魅力
さて、長崎に20年以上暮らしていても『ばらかもん』に登場する方言は5割以上わかりません。
長崎は5つくらいに別れていて、それぞれ言葉や文化が違います。
長崎で暮らした経験があってもよそ者には「言葉の壁」がありますね。
ちなみに福岡人と長崎人が話すとき、それぞれの方言で話しても7割くらいは通じます。
残り3割は厳しいですね。
本州から来た人には福岡と長崎の方言は同じように聞こえるらしいですが、全然違うんですよ。
長崎市内と五島列島は『ばらかもん』を読んでいる限り、かなり違いますね。
「ひさんいを」は『ばらかもん』で初めて知りました。
家人が石鯛大好きで、誕生日には市場に買いに行っていたのですが、一度も耳にしませんでした。
魚の名前ほど地域で違うものもありませんしね。
関東で「エボダイ」「イボダイ」と呼ばれている夏の魚は、長崎市内では「モチウオ」「シズ」と呼ばれています。
「モチウオ」ってなんかかわいくていいですよね。
2006年に出版され、長崎でヒットしたのざわのりこ著『長崎に来ちゃった! 関東女のビックリ移住体験』。
タイトル通り、関東出身の女性が結婚して長崎に移り住んだ経験を描いたコミックエッセイです。
やはり、方言について多くページが割かれていて、一番おもしろかったのは日経新聞地方版にも掲載された部分。
長崎弁の語尾「〜しとらす?」「〜みんと」
が「シトラス」「ミント」に聞こえてさわやか!というネタ。
好きですね。
『ばらかもん』に出てくる書道家像は現実味がない!?
さて、主人公 半田清舟(はんだ せいしゅう)はイケメン書道家という設定。
ここにちょっと突っ込みたいと思います。
と言っても管理人は書道家を1,2の流派、30人程度しか知りませんのでご了承ください。
逆に突っ込んでいただいてもかまいません。
書家は「お手本通り」に書けると尊敬される!
半田が五島列島に移住するきっかけとなったのは館長を殴ったこと。
「お手本のような字」「つまらない」「平凡」と言われて、怒った半田が手を出してしまったという流れです。
えっと…書道には「臨書」といってお手本通りに書く学習方法があります。
美術を学ぶ人が名画を模写するのと同じですね。
お手本とは古典的な書で、弘法大師空海や嵯峨天皇、橘逸勢、光明皇后など歴史に名を残す能筆家の作品。
これがうまい人は書家の中でも尊敬を集めます。
書道家と一緒に展覧会に行くと「〇〇先生は臨書がすごいから、よく見るように」とか言われますね。
堂々とご本人に「今日は臨書を拝見するためにうかがいました。〇〇先生と言えば臨書ですよね」とお伝えすることもありましたね。
小説家でも文体模写はしますよね。
ウンベルト・エーコ著『ウンベルト・エーコの文体練習』はナボコフの文体をユーモラスにまねていてかなり笑えます。
書道家に専業は少ない
専業書道家ってあまりいませんね。
書道だけで食べるのは難しいので、学校教員・会社員との兼業という方が多いのが現状です。
学校教員が有利な理由があって、それは大作を書くときの場所確保。
畳数枚くらいの大作を書くときには体育館レベルの場所が必要なんですね。
この場所を探して使用する許可を得るのは結構大変。
墨で汚れる可能性があるので、会議室は借りられません。
大作を定期的に出品しなければ減点される、厳しい「会」がありますから、使える場所を持っているのは大きな強みになります。
書道家は市販されている墨汁を使わない
書道家は1,2枚書く時でも墨をすります。
一度、理由を尋ねたところ「市販されている墨汁は必要な時に出てこない」との返答。
これは字を書くとき、ここで出てほしいという場所で筆から墨が下りてこないことを指すようです。
また、墨汁で書かれた文字は一律でべたっとしていて表情がないですね。
やはり墨と水にこだわった方がすてきな作品になります。
水はミネラルウォーターや井戸水など皆さん、こだわっていましたね。
「企業秘密」といって墨をする水を教えてくれない書家さんもいました。
逆に水道水を使っていると、作品を見ればわかります。
時間が経つと水道水に含まれる物質が紙に出てきて「シミ」みたいになってしまうんですよ。
(同業者に「ケチ」なんて陰口をたたかれることも…)
大作を書くときは床に紙を置く
大作を書くときには床に置くことが多い印象です。
少なくとも私は壁に紙を貼るのを見たことがありません。
書道に使う紙は結構、もろいんですよ。
破けます。
作品ができ上って、破れた部分を表装でどうにかしてもらうなんてざら。
壁に紙を貼って字を書いたら、紙が破れるし壁が汚れますよ。
で、中腰で字を書くので、書道家は椎間板ヘルニアとか職業病に近いと思います。
書道家はなかなか天狗になれない
書道家で、大きな賞を獲得した方を知っています。
ですが、天狗にはなりませんね。
というのも、書道家以外で字がうまい人間がたくさんいるから。
たとえば、中原中也。
詩人です。
中也の故郷山口県には彼が中学時代に書いた字が詩碑になっていますよね。
詩人を目指していた不良少年が!あの字!ですよ。
中原中也の字を見るたびに凹む書道家、何人か知っています。
政治家、作家、各界に能筆家が存在するので、威張っている人はあまり見ませんね。
(全くいないわけではないですが…)
書道家は紙と墨と筆にこだわる
書家はときどき、中国に出かけて墨を買ってくることがあります。
なじみの書道用品店がありますし、表具屋もありますね。
筆なんて1本100万円近くするものもあります。
半田みたいに島にある雑貨屋で墨汁を買う、って聞いたことないです。
そもそも「弘法筆を選ばず」ということわざ、専門家に言わせると真っ赤な噓らしい。
弘法大師は筆も墨もめちゃくちゃこだわっていたそうです。
まとめ
『ばらかもん』の主眼は五島列島の自然や島民の暮らし。
書道の部分で突っ込みどころがあっても問題ありません。
正直、半田の職業は画家でも音楽家でも成立したのでは?と思いますね。
地方色豊かでほっこりできる『ばらかもん』。
まだ読んでいない人はぜひ、一度手に取ってみてくださいね。
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